壁の時

kaelshojo2006-11-19


時間の染み込んだ壁。


壁が生まれて、何度も雨が降って、屋根の時間がつたって来て、屋根の淡い紅が壁に染み込んで、壁は一人の人生を生きているのではない。と感じます。


時間の染み込んだ風景は、それ自体生き物のように感じます。
壁も歳をとる。それで、お爺ちゃんやお婆ちゃんののような、大きな穏やかさを手に入れます。



壁の前に立ちます。壁は目の前に僕を優しくも見守るし、同時に遠くを眺めてもいます。

時間の流れを、雄大な目で見つめているのでしょうか。僕が生まれる前から、僕が死んだ後まで。壁が壁であり続ける限り、時の流れは容赦なく壁に流れてきます。


それは、多分侘び寂びというものでしょう。


もし、今までそしてこれから誰かがこの壁に何かしらの思いを預けた時、同時に僕がこの壁に対して思いを込めた時、壁を通して繋がる物語もきっとあると思います。
それが伝承となり、神話となることもあるんです。
例えその物語が個人的な心のうちに秘められるものだとしても、それはかけがえのない、素晴らしい価値になるでしょう。


誰かが誰かに去られて壁に淋しさを託し、僕は誰かに優しくされたりしたこと壁に託します。
壁は淋しさも楽しさも、ゆっくり吸い込んで、自然の流れに還してくれます。



そういう時に立ち会える幸福は、多分自分の人生を認めることにも繋がっていくものです。




僕はそういうものを作りたい。心から。