消しゴムとエンピツの行く先

消しゴムとエンピツは、刻々と変化するお守りだと思う。毎日毎日使うから、一日として同じ形を留めていることはない。 使う者の意思に削られるように、消しゴムもエンピツもすこしづつ消耗していく。 消耗していく。というよりは、白いゴムと黒炭が「書きた…

やさしき自販機

僕の家の近くには環七という大きな環状の道路が走っている。道路沿いには、何百メートルかおきに自販機が置かれていて、夜になるとこっそり世界の裏側を照らすように、ささやかな明かりを灯す。 いつからか飲み物を必ずコンビニで買うようになってしまってか…

おいなりさん

深海から拾ってきたようなしっとりした油揚げに、ひっそり身を隠しているおいなりさんが好きです。 コンビニの片隅でひっそりと佇むさまが何ともいえない切なさを誘って、へたっとガラス棚に寝そべっている彼らを見ると、まるで不幸の快楽を味わうような危う…

猫又

家の近くには猫がいっぱいいます。あらゆる隙間に猫がいます。 そして、すごく足が速い。あ。と思った瞬間には、ワープしたようにパッと移動していたりします。ワープしても、こちらに警戒しているときは常に同じ目線を投げかけてくるので、例え一匹の猫だと…

花粉と風化の粒々の中で

花粉対策で、スキンヘッドにしました。これなら髪の毛に花粉の粉粒がくっ付いて、くしゃみ鼻水に悩まされることはありません。 髪を剃ることは世俗から離れる験(しるし)だと聞きましたが、お地蔵さんの世界では、ちょっと違うようです。放置され、風化によっ…

SF Jazz Collectiveは女性の隣にある。

久しぶりにBLUE NOTE TOKYOに足を運んだのは、JOSHUA REDMAN(TENOR SAX)の主催するSF Jazz CollectiveがLIVEに来ていたからです。SF Jazz Collectiveは、サンフランシスコの全米最強ジャズ・オーガニゼーション。ベテランから若手まで、優れた才能を持ったプ…

死の叙景

朝、起きて窓を開けると、必ず向かいの家のお婆さんが洗濯物を干している。 目は合ったことがあるけど、まだ挨拶は交わしていない。 老人独特の防壁というか、中々心を開かない硬い土のような雰囲気が、僕らを目礼だけに留まらせている。それ以上彼女を掘り…

ジャムパンの行方

そう云えば、大人になってジャムパンを食べなくなったと思った。 今パン屋さんで物色して、ショコラデニッシュとかパンプキンタルトとか宇治金時ロールなんて洒落たパンは買っても、純粋にジャムだけがパンの真ん中にどーんと入った、いなたいパンは視界に入…

下手こそ

何か習い事を始めるとき、最初は何でも下手なもの。泳ぎ方を知らない子が、初めてプールに入ったとき、その泳ぎ方はきっと下手だ。 ピアノを知らない人が、始めて鍵盤を叩くとき、きっとメロディは崩壊し、下手な音楽になってしまう。下手、というのは文字通…

云わザル。

本来自分で口を閉じるサルのことを言うけど、このサルは苔に口を封じられています。 このサルは何か云いたいことがあったのか、或いは絶対喋ってはいけない禁断の言霊をいまだに体内に封じているのか・・・。 地蔵にはもともと人の想いを封じ込める役割があ…

地蔵様 ②

しっかり根を張った顔中の苔が、この地蔵様の生きてきた時間を証明します。 人々に忘れられ、殆ど手入れのされていないこの顔は、しかし毎日ピカピカに清掃される都市の共同墓地より、ずっと美しく堂々とした気概を感じさせます。 この顔と向き合っていると…

地蔵様のかお

今、地蔵様を撮りためています。 ふとした瞬間に、まるで生きているかのような気配を醸すから不思議です。地蔵様にレンズを向けるとき、僕はなるべく人と対話しているような気持ちで 接するように努めています。 地蔵様を通して、人の顔を撮りたい。同時に人…

瞑る人

瞑る、はつむる。と呼ぶ。街で、たまにそういう人を見かけると、不思議と静かな気持ちになる。

形見

置き去りにされたモノが、それを持っていた人の記憶から忘れ去られた瞬間、それがあった『場所』の形見になる。 人に見放され、場所に魅入られて、モノは初めて侘び寂びを帯びるような気がします。流転する時間の中で、永遠を手に入れるのでしょうか。 形見…

葉っぱ

落ちて、綺麗になる。たまに、とてもいい形をする。

アウシュビッツで会う友人

藤井郷子さんのLIVEに行ってきました。 藤井郷子さんは、今世界的に活躍されているFree Jazzのピアニストで、特にヨーロッパ圏のJAZZシーンに 与えている影響が大きいと聞きます。(実際、ライブ会場には外国のプレーヤーらしき人が何人かいました。) 1stセ…

ざぶとん

座るために進化した道具。進化はやさしさに裏打ちされるものだと、思います。

ななめ

ななめに見える。写真の不思議な発見をしました。 この写真の主役は真ん中の樹で、この樹を傾けて撮ったら、 風景全体が傾斜しているように写りました。 一枚の写真を見るとき、その写真の情報によって、見る人の目線は ある程度誘導されているものだと思い…

イノシシタイガー年

今年はイノシシ年ですが、ここは敢えてタイガーで祝います。 写真の彼は明らかに偽タイガーですが、学生のころの僕の心のヒーローであったことは間違いありません。 偽タイガーは僕と同輩の油絵描きさんで、学生プロレスのタイガーマスクだった人です。 「偽」…

よいお年を・・・

ここ一ヶ月忙しくて更新できなかったのですが、再開です。 隙を見て地道に写真をアップしていこうと思っています。 2007年は一日一写真を習慣ずけたいですね。 ともあれ。 2006年に撮った風景は、一度記憶の中に見送ることにします。 皆さん、よいお年と、よ…

Miss.Annに会ってきた

Miss.Annは正確に言うと、人ではない。 Miss.Annは恐らく実在するけど、実際よく知られているのは、Miss.AnnがJAZZの有名な曲だから。 僕の日記にたびたび出てくる、僕の大好きなJAZZ SAX奏者のERIC DOLPHY。 彼が正に死ぬ直前に吹き込んだ「LAST DATE」って…

贅沢

ある宿に泊まったとき。 障子に朝日が射して、そこで見た風景に、確かに美意識を感じたんです。 日本が昔から、少しづつ積み重ねてきた意識のことです。 真っ白い和紙の空間は、光と共に遊ぶものだということを、僕はいつの間にか知っていました。 そこに落…

こういう

何でもない写真が好きだったりする。 被写体をしっかり真ん中に据えて。 究極的には、こういう普通の風景を撮りたいのかも知れない。 一方で、平穏さとは別の、もっとハリセンボンみたいに周囲に対してトゲを突き出すような、混乱の塊がうごめいているよな風…

壁の時

時間の染み込んだ壁。 壁が生まれて、何度も雨が降って、屋根の時間がつたって来て、屋根の淡い紅が壁に染み込んで、壁は一人の人生を生きているのではない。と感じます。 時間の染み込んだ風景は、それ自体生き物のように感じます。 壁も歳をとる。それで、…

一人で生きるより。たくさんで生きるより。

たくさんの花より 一輪の花 一輪の花より たくさんの花たくさんの街より 一つの街 一つの街より たくさんの花咲く、たくさんの街 今日は三上寛さんのLIVEに行ってきました。寛さんは60年代から活躍する偉大なフォーク・ミュージシャンですが(寺山修司が好…

田中 泯

舞踊家・田中泯の独舞「透体脱落」を、世田谷パブリックシアターで見てきました。 泯さんは、映画「メゾン・ド・ヒミコ」のゲイのママ役で出てましたね。 泯さんの裸体は、老いても実に美しかったです。 圧倒的なんですね、体が。 身体に問い続け、傷め続け…

飴食い

地方の女の子は、少しだけ顔に硬い印象があります。 皮膚に、独特の「張り」があるんです。 太陽や風、雨や夜の空気に、都会の子より長く触れているからでしょうか。 硬い。というのは、性格的なことを指しているのではなくて、生活する強さのようなものです…

80年

物心着いたときから、お土産屋のお会計の席に座っている、というお婆さん。 齢90とか。 同じ座布団に、お婆さんは毎日、80年もの間腰掛けて、それで手に入れた幸せがあるといいます。 変化の目まぐるしい東京で幸せを掴めない人もいれば、こうして同じ場…

その気になれば

時間を数えてみせる コーラを飲むタバコを吸う ポケットをさぐる金はある その気になったら 夏の終わりの海が見えるのに ・・・今日は引用詩。 フォークの巨匠、中川イサトのアルバム「1970」から。 夏の終わりの海を見に行けるのに、行かないのは、何で…

ライトセーバーの灯

オモチャでも、人を切ることは出来るんです。 写真の魔法を感じた、闇夜の一枚。 祭りの灯が消えると、少年の光る剣は、まるで灯台のようでした。 光に虫が吸い込まれるように集まるのと同じで、その小さな灯台をめがけて、僕のレンズも光に吸い込まれます。…