猫又

kaelshojo2007-03-09


家の近くには猫がいっぱいいます。あらゆる隙間に猫がいます。


そして、すごく足が速い。あ。と思った瞬間には、ワープしたようにパッと移動していたりします。

ワープしても、こちらに警戒しているときは常に同じ目線を投げかけてくるので、例え一匹の猫だとしても、色んなワープ先から目線を送ってくるので、何匹何十匹にもかんじることがあります。
これはなかなか怖い経験です。怖いのは、未知の存在と対峙しているときに感じる恐怖のことです。


一匹の猫と、無数の妖怪。


化け猫とか猫又、とか猫の妖怪が多いのは、猫が家の隙間を縫うすばしっこさが関係していると思いました。
しかも、建物の個性によって猫の動きや運動能力の個性にも差が出てくるので、その数だけ色んな数の猫又が存在しているとしても不思議じゃありません。
そのことが、妖怪のおかしみにも親しみにもなっている。


つくづく、妖怪というやつは人が生み出すものだな、と改めて思いました。
一匹の猫を何匹もいると思って、猫の存在を抽象化してしまっている、臆病な僕がいます。

臆病な一人の男の心の中に猫によって地図が作られ、時には動揺し、興奮し、頭の中の抽象的な現象が起こる。
この現象のことを「妖怪」という。
こう記すととても当たり前のことだけど、そういう妖怪=人間が、猫を通して愛しくなる瞬間があります。



家の前、じっと僕を見つめる猫は、もうどこかに消えていて、淡い視線の名残だけが中空に漂っていました。