眼の力
この子は、僕が泊まった宿の息子さん。
まっすぐに、カメラを見てくれた。
もちろん、幾分かの緊張や戸惑いもあったと思う。
でも、それだけがこの眼の力の原因じゃない、と思う。
岡山の高梁。
街全体が一つの家のようであり、非常に親しみ易い反面、同時にその社会はとてもとても狭い。
ごく血の近い者同士が結婚し、子どもを作る。
血の濃い家系がある。
この街の住人誰でも。
僕は実家が田舎だから、それが分かる。
皆の顔が何となく似ているのだ。
一見、外の人から見ると分かり難い差異だけど、それは、とてもはっきり映る。
その因果を、この子ははっきりと眼に宿していた。
高梁で生きる、という宿命を負った眼。
その覚悟が、田舎を離れた僕には、苦しいくらいに美しいんです。
どこへ引っ越しても、濃い赤味を帯びた視線が追いかけてくる。
その追走劇はどこか滑稽で、切なくて、僕の生きる人生を象徴している。
この劇からは、到底逃げれそうにないなぁ(笑)
この子の眼は、きれいだ。
心から、そう思います。