飛ぶ。
お兄ちゃんやお母さんと一緒に、とんぼが飛ぶように練習するけど、なかなか飛ばず。
それでも彼女は、ちっとも悲しそうな表情をしない。
また、ひたむきに竹の芯をくるくるさせる。
女の子は、飛ぶ。って言葉を知らないのかも。
飛ぶ。って言葉を知らないけど、飛ぶ。と同じだけの価値のある意味に届こうする。とても不器用に、真面目に。
言葉に翻弄されず、その真意に辿り着くまでのほんのわずかな時間って、本当に本当に一瞬の時間。誰もがそう長くいれる領域じゃない。
ただ、子どもならその時間に遭遇しやすい。
無垢だもの。
帰りの飛行機で、雲の切れ間に竹とんぼがくるくる回っているのが、見える。
どこまでもどこまでも、飛行機の翼にくっついてくる。
雲の湿気で、竹とんぼの回転が重くならないかな・・・
だから、二度と出会えない一瞬のために、感謝とカメラを用意する。
生きていると言葉に囲まれる。成長すると、言葉も増える。
感謝もわすれない。何かを失う。
君、空は飛べるの?
竹とんぼの羽の回転に、僕の言葉が巻き込まれればいいのにな。