あしあと

通りを歩く人たちは、気付いていないようです。


雨が降った後のコンクリの道路を歩いた跡には、微かに自分の足の形が留まっていること。

そういう足跡には、一瞬その人の過去の記憶だとか、これからの時間が映っているようです。
歩く度にそれを目の当たりにするのは残酷なことでもあるし、美しいことのようにも感じました。




ぴしゃ。ぴしゃ。ぴぴしゃ。




たたたた、たった。




コンクリが、湿った黒い鏡だと知らない子どもは、お母さんやらお父さんをぐんぐん追い越して、走っていきます。


何だろう?影のようであって、もっと存在感のあるもの。
何だか切なくなるのは、道に自分の内臓が見え隠れするからですか?




少ーし暗い歩行者天国に、無数の足跡。
うっすら残った足跡は、歩行者天国のタイム・リミットに合わせて、勝手に蒸発していきます。

そこをゆっくり歩くと、いろんな人の思い出と未来が涼しい湯気のように立ち昇って、僕の鼻腔に入り込んできます。




ああ、また吸ってしまった、足跡。



なぜかその後、僕はものすごく人恋しくなって仕舞うのです。