無期名刺で世界破壊

帰り道で、また不思議なホームレスを見ました。


何枚もの白いカードの束に、神懸かったように、何やら文字を書き込んでいるのです。




名前だぁ、と思いました。




そう、あれは、多分名刺です。


仕事を失ってしまった人が、一体誰に向けて名刺を出すんでしょう。




“目的のないまま、しかし名前を永遠に書き続ける”

という情熱的な行為は、実はたいそうおそろしいもので、世界を滅ぼすだけのモチベーションになりえるな、バカヤロー。などと悪態をついたところで、目の前の禍々しいエネルギー!に抗うことは出来まッツぇん。(悪態をつきたくなるのは、心底怖いからです。一種の防衛反応なんでしょうね。)



最後には彼のあまりの直向きさに、正直、感動したほどです。




名無しの名刺で、世界を滅ぼしてみせてよ。そしたら、君、モテまくるよ。絶対。とか、アホくさー、なんて再び悪態をついても、敵うわけないです。




描いてるパワー、ほんとにすごいだもの・・・・・




辛うじて、そのホームレスは、自分の名前を捨ててなかったのかも。
全てを失って尚、自分の名前にしがみ付くならば、そういう人は来世とかにめぐまれるんでしょうね。きついけど、何があっても、名前だけは捨てたらいけないような気がします。気がするだけで、捨てた方が楽にはなりうそうですけどね。





ただ、僕は絶対そのホームレスの無記名刺、いりません。


受け取った時点で、僕の名前は宙吊りになり、気付くと、僕の名前はもうどこにもありません。





さて、ここで問題です。ぼくは本当は誰でしょう?







くす。世界が今滅んだかも、ちょっとだけ。