筆箱に棲む虫を、呼ぶ。
晩ご飯に四種のお豆たちとブロッコリーのトマトスープを拵えて、食べていたんです。
いもむし。
小さい小さい。本当に小さい。シャーペンの芯ぐらいの大きさで(今気付いたのですが、あらゆる虫の幼虫は筆箱に収まってしまうんですよね。虫カゴより、虫を飼った筆箱の方が素敵です)、煮られて、五右衛門のように煮死んで(いもむしが奪ったのは一千両ではなく、単なる僕の食欲だけです)、しかし今だ、いもむし自身の青は、赤いスープに気持ちのいいくらいまっすぐ伸びています。
ひー。
き、きもー。
鳥肌。
けど、僕はまぁ、食べたんですね。
何で?
そうしたかったからです。スープをかえさずに、いもむしごと、青ごと体に採り入れたかったのかなー。でも、やっぱりそれは本心じゃあないです。やっぱりやっぱり気持ーち悪い。でも、何かが引っ掛かって、飲め、という導火線、20年位前に火をつけた?
引っ掛かるものは。
引っ掛かるものは、小学生の頃筆箱の中に入れ忘れたまま放っとかれたもので、それはたった今も放っとかれていて、僕が意識的に招待しないと気配すら見せてくれません。
だから。
だから僕は、我慢して、赤いはずのスープを青くして飲みます。飲み干します。
ふと。
これが毒薬で、僕はこのまま死んだら幸せだろうなぁ、とか本気で考えたりします。かなり本気です。