鼻折れブルー

天狗ではなく、美しい人。


電車に乗っていると、露骨に撲られた感じの青い痣で、鼻の折れ曲がった、皮膚の綺麗な女性が乗ってきました。


曲がっていても、綺麗なものは綺麗だなぁ、と、しばらく見とれてしまいました。電車に射し込む斜陽が、またプリズムの屈折みたいに、彼女の屈折した鼻を透き抜けていきます。女の子の軟骨を透過した光は、世界で一番美しくて潔い光。


しかし、その光景に酔う暇もなく、電車を降りねばなりませんでした。


仕事を初めて、一つ何かを明確に失ったとすれば、それは街角のブルースを聴き取る能力です。まだ、鼻折れ美人に反応してるから、マシですけど。



でも。



彼女の鼻折れブルースに気付かなくなったら、僕は自分の鼻を折ってやんだから!!