ALL温野菜

お昼を食べた帰りに、世界に存在する全ての野菜が温められました。


信号を待っていると、小学生の男の子が二人で隣に来ました。彼らぐらいの歳だと、秘密も外に打ち明ける種類のものばかりで、如何にも幸福そうに喋ります。だから、大きい声です。



A:「温野菜って、知ってるか?」
B:「あ?野菜が鳴ると?」
A:「ちがーう、音じゃなくて、温かいから、温野菜よ」



と、ここで一旦、B君の思考が停止します。何故なら、彼は温野菜というものを勿論口にしたことはあるのだろうけど、それが“温野菜”だ、という認識がないまま食べていたからです。


経験として、温野菜を食べていない、言葉と物体が一致しません。軽く、心地よい混乱。想像力が眼に見えて前進する、羨ましい混乱。


B君にとっては、温野菜という野菜は、もうそれが生まれて土の中で育っている頃から、既に“温かい”野菜なのです。にんじんやだいこん、ピーマンにきゃべつ、といった固有名詞としての「温野菜」があって、温かい、というのはその野菜の個性です。B君にとっては(笑)




B:「土に埋まってるときから、野菜が温かいの?」




そうだ。それでいいんだぜ!!と感心しました。焼いたり、煮たりして温かいのではなく、もう、実がなる頃には徐々に熱を帯び、地中から引っこ抜くとき、湯気が立ってんの!




あははははははははははははははははははははー。




もう、これは感動以外、なにものでもないです。


出来れば。


世の中の野菜が、全て温野菜になると、素敵だと思いました。


そして。






A:「バカじゃないの?」





!僕もそう思います(笑)。世間は、厳しーいヒ。