新宿御苑で研修があって、その帰りに同期で気の合う仲間四人と新宿駅まで歩くことにしました。その中の一人のK君がいつもいい居酒屋をエスコートしてくれるので、新宿といえば!と期待していたら、地味な中華飯店に案内されました。なんといって言ったらいいのかなあ、一人で歩いてたら、それがお店だと気付かない感じのお店。

お、おいしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!

餃子と、メンマと、ザーサイ。殆どこれに終始していたのですが、本当に新宿というところは奥が深い。さすがK君。英語ぺらぺらだし、いい店しってるし、もてそうだよ(笑)。
餃子が、こんなに旨いものとは。竹の子の漬物が、こんなに旨いものとは。太公望。僕等の中でこのお店は「TKB」と愛称することにしました。大きなCMの仕事終わって気持ちよく飲みたいときは、四人そろって「TBK」と言うのです。何だか、愉快。痛快。

TKBが好きになった理由は、他にあります。入ったとき、すぐに目に飛び込んできたのが演劇のポスターにポスター、moreポスター。しかもその幾つかは、既に公演終わってるし(涙)。そこが、いい。時間が、そこに取り残されたみたいで。世の中には、決して必要じゃない時間が結構存在して、それは一人一人の中にも結構堆積していて、そういう時間の幾つかがTKBに流れてきて、醤油で煮られるし、油で炒められるし、酒に流されていく。世界に捨てられた時間が、エビやらニンニクやら中華野菜と一緒に、静かに葬られるんです。
またコックの親父さんは古田新太にすごく似ていて、演劇のポスターに囲まれた空間が、一瞬本当に小劇場になった錯覚すら覚えます。

ここは、忘れられた場所なんだ。

世界に取り残されたその場所は、ウスターソースの弾ける、香ばしい匂いがするのでした。TKB。いいよ。