田中 泯

kaelshojo2006-11-12


舞踊家田中泯の独舞「透体脱落」を、世田谷パブリックシアターで見てきました。
泯さんは、映画「メゾン・ド・ヒミコ」のゲイのママ役で出てましたね。


泯さんの裸体は、老いても実に美しかったです。


圧倒的なんですね、体が。
身体に問い続け、傷め続けてきた時間と苦悩の堆積が「老い」という一つの完成を、堂々と実証します。


彼が深い呼吸をする度、肋骨と、それをくるむ皮膚のうねりが万華鏡のように見る者の視線を歪ませ、僕らの意識を日常から一気に引き剥がします。




全裸の泯さんは、自分の性器すらコントロールをしているように見えました。

光に両手をかざし、仰け反った姿勢のまま延々祈りを捧げるシーンがあったのですが、少しづつ少しづつ泯さんの性器が高揚していきます。
単に興奮しているのではない、と直感したのは、その身体現象がまるで精緻に構築された映像のように、見事に音楽と一致していたからです。

というか、完璧に冷静に操っていました。



優れた画家が絵筆でタッチを自在に操るが如く、泯さんは身体のあらゆる細部を自身の表現道具の一部として、完全に自らの意思の支配下に収めていました。


舞踊家として、それは計算された演出だったんです。


終わることのない、まるで身体のデティール同士が血液の流れをリレーしているかのような演舞に、永遠に見蕩れていたいような夢見心地でした。





最後に泯さんの言葉。
「考えることを放棄したくなる程、結論ゴールのない『空間』に私は恋をしてしまったのでした」


なんちゅう言葉や。すごい。