Booker Littleのいる焼き鳥バー。
僕の大好きなトランペット奏者。もう50年も前、突然亡くなった素晴らしいJAZZMANで、彼の紡ぐ優しいけど寂しい音が本当に好きなんです。
こないだ何気なく入った焼き鳥バー。料理人のオーナーは手が空くとトランペットを吹いてくれる。
その時はお客さんのリクエストに答えて、ジブリのテーマソングを軽やかに吹いてくれました。
雲のようなメロディが、焼き鳥を焼く香ばしい煙と相俟って、それがそのオーナーの人生を表しているようでした。
やさしい人。
やさしい人、は照れくさそうに、少しトランペットにだけ自分の夢に対する寂しさのようなものを見せます。
Booker Littleみたいな人かも、思いました。
夢は諦めたんじゃなくて、自分の人生の中で一つ消化したから、彼の吹くペットはとても穏やかさに満ちています。焼き鳥も焼かれます。
トランペットは彼の一部で、焼き鳥も一部。
お店を出るときに
「今度Booker Littleをリクエストしてもいいですか?」
と聞いたら、少し驚いた眼をして、
「はい、待っています」
と静かに、応えてくれました。
夜の空気が、また濃く、また優しくなっていく。