池尻大橋劇場

皆さん、終電に乗ったことがありますか?

銀座〜赤坂〜青山〜渋谷を貫く半蔵門線の終電です。




怒涛の数のサラリーマンが乗ります。降ります。立ち寝ます。寝ゲロします。
紫色の二酸化炭素。イエローモンキーの「紫の空」の意味が今分かった!と叫んでみてわいかが、自分?
電車の中はいつだって酸素不足の小宇宙です。パープルスカイ。
皆さんの背広が黒いから、そのまま敷き詰められているので、手軽な宇宙の闇。


ただ、底の見える闇ですけどね。
でも決して浅はかな闇というのでもなく、そこは確かに闇で、小宇宙で、放り込まれると不安になって仕舞うのです。


電車がぎゅうぎゅうになりながらも、泥酔からくる睡魔に負けそうで、見るからに辛そうな29歳くらいの二人組みが、僕の前にいました。





A「おお、ここどこだよ、眠いよ」

B「ああ、ここは池尻大橋だよ。渋谷から一駅しか来てねえよ」

A「・・・・・・・・(眠)。い、池尻ィ?まだ!?そんなわけあるか。
  池尻なわけ・・・・・・・・(眠)」

B「おれは真実を言ってるんだ。ここは池尻だ!」

A「・・・・・・・・」

B「真実って、何だ!(独りツッコミ)」

A「・・・・・おお、池尻はまだか?」

B「それが真実だ。」

A「分かった、俺はお前を信用する。だから、寝るわ、限界だ(即寝)」

B「あう・・・・・」







何だか、池尻大橋に停車したたかだか数分の間に、人生劇場のクライマックスを見た思いです。人間って、やっぱりおもしろいよ。


AさんもBさんも、眠たいだけです。眠たいだけなのに、人の面白さを伝えてくれます。
都会が面白いとしたら、正しくその一点ではないでしょうか。


ただの行動が、いちいち重いの。責任のない重さが、とても冷たいのです。




“生きるのって、しんどいね。”




だれも、そんなこと云いませんよ、終電の中。

きっもち、いーーー。僕の日常です。えへへ。